2018年5月13日日曜日

インドネシアで一家6人が3連続自爆テロ実行:前例なき悲劇の背景にある論理とは

インドネシア第二の都市スラバヤにある3カ所の教会を狙った3連続自爆テロ事件が発生しました。


インドネシアでは4日前に刑務所内でイスラム国戦闘員が武器を奪って複数の警備員を殺すというテロが発生したばかりです。

この時もイスラム国は犯行声明やビデオを出しましたが、今回の連続自爆についてもイスラム国が犯行声明を出しています。



これによると、まずはペンテコスタ教会に対して自動車爆弾による自爆テロを実行、次に聖マリア教会に対して自爆ベルトによる自爆テロを実行、最後にディポネゴロ教会に対してバイク爆弾による自爆テロを実行し、11人を殺害、41人を負傷せしめたとのこと。

各々の場所はについては、STRAITS TIMESのこちらの地図をごらんください。


「インドネシアもテロが頻発するようになってきたな…」とここまででも既に十分に衝撃的ですが、本当に衝撃的なのはテロ実行犯の実像です。

警察発表によると、これらのテロを実行した6人は全員、シリア帰りのひとつの家族の成員であり、15歳と17歳の男兄弟が聖マリア教会を狙ってバイク爆弾で自爆、自爆ベルトを装着した母親が9歳と12歳の娘とともにディポネゴロ教会前で自爆、父親がペンテコスタ教会を狙って自動車爆弾で自爆した、とのこと。

さすがの私も、あまりの壮絶さに言葉を失いました。

ある筋によると、この一家はイスラム国に忠誠を誓っているJAD (Jemaah Ansharut Daulah) の設立者であるアマン・アブドゥッラフマーンのスリーパーセルだったとのこと。

警察は同じくスラバヤにあるカテドラル教会に対するテロを実行しようとしていた人物を拘束、またペンテコスタ教会では爆発前の爆弾を発見したとも発表しています。

さらにジャカルタ警察の報道官は、西ジャワのチアンジュールで同じくJADに属するテロリストと警察が銃撃戦となりテロリスト4人を殺害、2人を拘束したと発表しました。

連続自爆犯一家とチアンジュールのグループとのつながりについてはまだはっきりとしていません。

さらに夜になって、今度は東ジャワ州にあるシドアルジョの警察署近くで爆弾テロがあり、少なくとも1人が死亡しました。

このテロと自爆一家とのつながりも現状では不明です。

イスラム国がカリフ制再興を宣言したのは2014年6月で、それ以降この4年間に世界中で恐るべき数のテロを実行し数え切れない犠牲者を出してきましたが、私の知る限り、一家6人全員が一度に連続自爆テロを実行して果てるなどという前例はありません。

2015年12月にアメリカのカリフォルニアで発生したテロは、イスラム国を支援する夫婦二人が実行したものでしたが、これも非常に珍しい事例です。

兄弟がともに特攻攻撃で果てたり、立て続けに自爆したり、父と息子が連続して自爆するといった例もありました。

しかし父、母、娘2人、息子2人が連続して自爆、あるいはそれに類する事例はないように思います。

私はここで、9歳の娘を巻き添えにしてまで…という情緒的な話をしたいわけではありません。

拙著『イスラム教の論理』に記したように、イスラム国のような過激派は現在、武力で敵を倒すジハードはイスラム教徒全員の義務であると捉えており、そこに女性や未成年者といった例外はありません。

また彼らはジハードを最高の善行と信じ、それを敢行することにより天国に直行できるとも信じています。

「無辜の人々を殺しておいてそんなわけないだろう」とか、「天国なんてあるもんか」という私たちの論理と彼らの論理とは、根本的に全く異なっているのです。

ですから当然、未成年の娘や息子を道連れにして自爆するなんてかわいそう、という感傷など、彼らには完全に無縁です。

この2〜3日中には今年のラマダンが開始されます。

彼らにとってラマダンは「斎戒の月」であると同時に、もしくはそれ以上に「ジハードの月」です。

昨日はパリでもナイフによるテロ事件が発生し、こちらもイスラム国が犯行声明を出しました。

警戒すべき期間はむしろこれから始まります。

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