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2019年10月29日火曜日

テロリスト称賛を隠しきれない人たち

2019年10月27日、アメリカのトランプ大統領によってイスラム国指導者バグダーディーの死が発表されました。

トランプ氏はバグダーディーの死で「世界はより安全になった」と主張しましたが、本当にそうなのか、彼はどのような立場にあり、彼の死はイスラム国や世界にどのような影響を与えうるか、トルコはテロ支援国家なのかといった問題については、FNNに寄稿したこちらの記事をご覧ください。

それとは別に、どうしても記しておきたいことがあったため、久々にブログに書くことにしました。

それは、バグダーディーの死により、イスラム過激派テロリストへの称賛を隠しきれないメディアや専門家の「本音」が露呈された、という事実です。

まずはこちら、ワシントン・ポストの記事です。

 バグダーディーのことを「厳格な宗教学者」と描写しています。

テロリストでも過激派でも大量殺人犯でもレイプ犯でもなく、「厳格な宗教学者」です。

日本人2人を含む多くの人を残虐なやり方で斬首したのも、ヨルダン人パイロットに生きたまま火をつけて焼き殺したのも、多くの同性愛者を高い建物から突き落として処刑したのも、ヤズィーディー教徒の女性たちを性奴隷にしたのも、キリスト教徒をズィンミーという地位に貶めたのも、「不信仰者」や「背教者」数万人の命を奪い、家族を奪い、故郷を奪い、破壊し尽くしたのも、全部イスラム国です。

ワシントンポストがその指導者であるバグダーディーを「厳格な宗教学者」と讃えるのには、理由があります。

ワシントンポストは、イスタンブールでサウジの手により殺されたカショギがコラムを書いていた新聞です。カショギは、サウジやエジプトがテロ組織指定しているムスリム同胞団と深いつながりのあった人物です。

ムスリム同胞団は、民主主義をツールとして利用することによってイスラムによる世界征服という目標を達成すべく活動している世界最大のイスラム組織です。

こうした動きは「政治的イスラム」と呼ばれ、ムスリム同胞団の現在の最大の支援者であるトルコのエルドアン大統領がその急先鋒です。

ワシントンポストはカショギ殺害後、カショギの遺志を継いだ報道を続けると宣言しました。

ムスリム同胞団同様、イスラムによる世界征服実現を目指し「立派に殉教」したカリフ・バグダーディーを「厳格な宗教学者」として讃えるのは、カショギの遺志の継承者としてこれ以上ないほどふさわしいふるまいだと言えます。

なおトランプ大統領は、ワシントンポストをかねてより「フェイクニュース」と批判しており、先日アメリカ当局は政府機関に同紙の購読契約の更新をしないよう通告しました。

次はイギリスの、ザ・タイムズ。


バグダーディーは「有望なサッカー青年でありコーランを学ぶ学生だった」そうです。

バグダーディーの死は、ザ・タイムズにとってよほどショックだったことでしょう。

同様の記事はBBCインドにも。


サッカーのスター選手だったことだけではなく、子供や囚人にもコーランを教えていた、とのこと。

うーん、文武両道、実に素晴らしい「厳格な宗教学者(byワシントンポスト)」ですね。

次はブルームバーグ。

 
「無名のコーラン朗唱者からシリアとイラクを支配する主体の統治者へ」と、まあみなさん、よっぽどバグダーディーの「立身出世」にご執心のようです。

次はロイター。



バグダーディーは「転落」したということは、それ以前はよほど素晴らしい地位にあったという認識のようです。

次にパキスタンの政治家。


アメリカ大統領の発表は信じないけど、イスラム国の公式発表は信じるそうです。

最後に日本人研究者。
「社会科学に基づいたきっちりとした研究」をしないと、バグダーディーやビンラディンを否定してはいけないそうです。

また、「歴史的研究」をしないと、イスラム国やアルカイダを否定してはいけないそうです。

テロリストやテロ組織への称賛を隠しきれず、むしろ本当は絶賛したいのだが理性でどうにかそれを抑えている、といった言説は、実はメディアにも研究者にも多く見られます。

バグダーディーの死は、彼らが本音をさらけ出す契機となったという意味で、私にとっては極めて重要です。

一般に、イスラム過激派や政治的イスラムを擁護したり、それらを批判する人に対し「ヘイトだ!」とレッテルを張りその発言を封じ込めようとするメディアや人物は、左派的傾向にあります。

左派とイスラム過激派、政治的イスラムは、今ある世界の秩序やルールを全て破壊しなければならない、という信念を持っている点で一致しています。

だから西洋の左派は「リベラル」を自称しつつ、イスラム世界の「リベラル」ではなく、イスラム過激派や政治的イスラムに接近し、「ハマスやヒズボラは左派の仲間だ」と臆面もなく発言したりするのです。

その様については、中東協力センターニュースに寄稿したこちらの記事に記しました。

イスラム国やアルカイダなどのイスラム過激派やムスリム同胞団などの政治的イスラムが目標としているのは、もちろん、イスラムによる世界征服です。神の法であるイスラム法によって全世界を統治するため、彼らはジハードを続けています。

左派が今ある世界の秩序を破壊した後、何をもたらそうとしているのかは私にはわかりません。一部の人が富と権力を独占し、その他大勢を「平等」の名の下に統治するソ連のような体制でしょうか?

私はメディアや研究者の世界に深く刻み込まれたこうした破壊イデオロギーに対し、甚大な危惧を抱いています。

2019年1月30日水曜日

2019年版「世界の脅威評価」とアジアにおけるイスラム過激派

ODNI(アメリカ国家情報官室)が2019年版の「世界の脅威評価」リポートを公開しました。

サイバー攻撃や大量破壊兵器等と並び「世界の脅威」のひとつとして取り上げられているのがテロリズムです。

テロリズムの第一に挙げられているのがスンナ派武装過激派であり、世界中に多くの組織を持つグローバル・ジハーディストは依然として世界の主たる脅威であり続けているとされています。

グローバル・ジハーディストを束ねる二大組織として挙げられているのが、イスラム国とアルカイダです。

両者の世界的な勢力拡大の実態は以下の地図に示されています。


斜線で示されたトルコ、エジプト、リビア、アルジェリア、マリ、ソマリア、イエメン、アフガニスタン、パキスタン、バングラデシュといった諸国にはイスラム国とアルカイダの両勢力が存在し、多くの場合両者は直接戦闘し牽制しあっています。

興味深いのは、シーア派が大多数を占めるイランがアルカイダの活動地域として明確に図示されている点です。

アルカイダの指導層がイランに潜伏し影響力を強めていることは、既にアメリカ政府や国連も指摘しています。

 イスラム国は領土を大幅に失った現在もイラクとシリアに数千人の戦闘員を擁し、世界中に8支部、10以上のネットワーク、数千人以上の支持者を保持し、依然として中東及びアメリカを含む西側諸国に対する攻撃を続けるだろうと予測されています。

またイスラム国はスンナ派イスラム教徒の抱える不平不満を吸収し社会的な不安定さを利用することによって、将来的にはイラクとシリアに再び広大な領土を獲得することを目指すだろうとも予測されています。

アルカイダについては、世界に広がるネットワークの指揮系統構造を強化しアメリカを含む西側諸国への攻撃の呼びかけを続けているものの、ここ数年その攻撃は国外の権益に対するものに限定されており、今後もその傾向は続くのではないかと予測されています。

またアルカイダの支部の中ではイエメンを拠点とするアラビア半島のアルカイダ(AQAP)、北アフリカとサヘル地域を拠点とするイスラムマグレブのアルカイダ(AQIM)が特に強大化しており、いずれも反政府武装闘争を展開しつつ「安全地帯」と資源を保持し、地域におけるアメリカの権益への攻撃の機会をうかがっているとされています。

2018年にジハード主義者が特に勢力を拡大させた地域としては、アフリカとアジアが挙げられています。

マラウィを占拠して半年以上フィリピン軍と攻防戦を繰り広げ今も各地でテロを実行しているフィリピンのイスラム国、幼い子供を含む家族全員による自爆テロを連続的に実行したインドネシアのイスラム国など、アジアでのイスラム過激派の「活躍」は世界的に見ても顕著なものとなっています。

この後に及んでなんですが、「アジアのイスラム教徒は穏健だ」という思い込みはイスラム過激派には一切当てはまりません。

イスラム国家樹立を目指し武装して国軍と直接戦闘を繰り広げたり、あるいはテロ攻撃を実行したりするという点において、アジアのイスラム過激派は中東やアフリカのイスラム過激派と違うところは全くありません。

また国境を越えてグローバルに「活躍」するという点においても、皆等しく共通しています。

マレーシアのテロ対策部門長によると2013年から2018年までに同国でテロ容疑で逮捕されたのは445人であり、そのうち4分の1以上を占める128人が外国人だったとのことです。

テロ容疑で逮捕された外国人のうち最も多いのがフィリピン人で46人、次がインドネシア人で35人となっています。

タイやシンガポールといった東南アジア諸国の当局もイスラム過激派とテロに対する警戒を強化しています。

イスラム過激派やテロといった脅威はもはや、中東やアフリカといった日本から「遠い」世界だけのものではなくなっているということを、多くの事件や統計、情勢分析が指し示しています。

2018年3月12日月曜日

シリアで新たなアルカイダ組織結成

先月末、シリアのイドリブで新たな武装組織連合フッラースッディーン(HDと略すことにします)が結成されました。

日本語に訳すと「宗教の保護者たち」といった意味です。

イドリブは現在、HTSとJTSというジハード系武装組織連合間で熾烈な戦いが繰り広げられていますが、HDは反体制派同士の戦いを停止しともに東ゴータで戦火のもとに苦しむ仲間を救済するためにシリア政府軍と戦おうと呼びかけました。


これまでに、ジャイシュルマラーヒム、ジャイシュルバーディヤ、ジュンドゥッシャリーア、ジャイシュッサーヒル等々、イドリブやラタキアの10以上のイスラム系武装組織がHD入りを誓う声明を出しています。




これらはいずれもアルカイダ支持で知られる武装組織であるため、アルカイダからの「公認」はまだなされていないものの、メディアや専門家は「HDはシリアにおける新たなアルカイダ組織だ」との見方で一致しています。

シリアには内戦開始当初からアルカイダ系武装組織が存在しており、2012年以降はヌスラ戦線がもっぱら「シリアにおけるアルカイダ」の役割を担ってきたものの、2017年にはヌスラが自らアルカイダからの脱退を宣言、国際的には未だに「ヌスラ=シリアのアルカイダ」という認識が強いものの、シリア内戦においてはHTSという武装連合を結成し、他の反体制派やシリア政府軍と戦うという、妙な状況になっていました。

アルカイダのイデオロギーの特徴のひとつは、今の指導者であるザワーヒリーが演説でよく言っているように、ジハード組織同士でいがみあうのはやめ、一致団結して敵と戦おうと考える点にあります。

HDが最初に出した声明でもその特徴は確認されます。

共にジハードを掲げシリアでイスラム法による統治を実現させるという目標を共有するHTSとJTSという武装連合が、アサド政権に対して共闘しないばかりか互いを敵として戦っているというイドリブの現状は、アルカイダのイデオロギーとはかけ離れています。

興味深いのは、HD結成後より世界各地からHDを支持するという落書きのような投稿がSNS上などになされている点です。

こちらはインドネシアから。


こちらはインドから。


こちらはソマリアから。


こちらはナイジェリアから。


こちらはバングラデシュから。


これらは、アルカイダのイデオロギーが世界でいまだに求心力を持っていることの表れだと考えることもできます。

2017年10月のラッカ陥落後イスラム国の退潮が顕著になる中、シリア内戦の有力なプレイヤーとして新たに頭角を表すのは、このアルカイダ系武装組織かもしれません。

2018年3月2日金曜日

シリア東部で継続される「イスラム法による統治」


拙著『イスラム国の論理』でも記したように、イスラム国の最大の売りは自分たちこそが最も正しく「イスラム法による統治」を実践する主体であるという点にあります。

彼らが日々、映像や画像を公開する主たる理由は、それを広く世界にアピールするためであり、シリアとイラクで領土を大幅に減らした今も、彼らは細々とそれを続けています。

シリアにおけるイスラム国の領土は、下の地図の濃いグレーで示された部分です。


昨日、シリア東部のものとして公開された画像には、「イスラム法による統治」の今が映し出されています。

こちらは裁判所の様子。


イスラム法に基づいて裁判が行われているというのは、「イスラム法による統治」の基本です。

こちらは喜捨センターの様子。


喜捨はイスラム教徒に課せられた5つの重要な義務のうちのひとつです。


貧しい人には喜捨を財源として食糧などが配布されます。

こちらは宗教警察。街で見つけた「イスラム法に反するもの」を注意して回るのが宗教警察官の仕事です。



こちらは検問の様子。


こちらは検問などを担当する警察官たち。


こちらは宣教センター。市民を集めてイスラム教についての勉強会などを開催します。


これらの写真からは、現在のイスラム国による統治は、ラッカやモスルを統治していた全盛期と比べると格段に小規模だということ、また資金難であろうことが窺えます。

しかしどれほど苦境にあろうとも、「イスラム法による統治」を続けているという点こそが、彼らのレゾンデートルなのです。

先ほど発行された週刊誌においてもイスラム国は、HTS(アルカイダ系反体制派武装組織)のシリア政府やロシアに対する「弱腰外交」を批判し、その失敗をあげつらった挙句、自分たちはあくまでも神の法にのみ従うと決意を新たにしています。

2018年1月23日火曜日

タイの市場で爆弾攻撃:タイのイスラム武装勢力とジハード


昨日、タイ南部のヤラー県でバイクに仕掛けられた爆弾が爆発し、3人が死亡、22人が負傷しました。

犯行声明等は出されていないものの、警察筋によると容疑者はイスラム教徒の少年のようです。

バイクが置かれた場所が豚肉屋の目の前であり、亡くなったのも豚肉屋の女主人と客の男性だったことから、仏教徒を標的にした可能性もあります。

タイは仏教国として知られていますが、ヤラー県、パッタニー県、ナラティワート県、ソンクラー県といった南部には、マレー語を話すイスラム教徒が多く居住しています。

同地域は13世紀からパッタニー王朝というイスラム系の王朝によって支配されていましたが、18世紀末にタイのチャクリー王朝によって征服され、20世紀初頭にはタイ政府の直轄地として併合されました。

同地域では現在に至るまで、タイ政府に不満を抱くマレー系イスラム教徒による暴動や武力闘争が散発しており、2004年から現在までだけでも7000人近い死者を出しています。

昨日の爆弾攻撃もおそらく、その一環として位置づけることができます。

日本の外務省も、既出の4県については渡航を自粛、あるいは止めるよう呼びかけています。


ある研究者によると、タイ南部のマレー系イスラム教徒による武力闘争は、1960年代から90年代初頭にかけての時期と2001年以降の時期では性質が異なるとされます。

彼によると、以前は様々なイスラム系武装グループが各々の目的やイデオロギーを掲げて反政府闘争を行っていたため、相互の連携はほとんどなかったものの、2001年以降はおおむねイスラム教というイデオロギーを掲げるという点で一致しており、ゆえに相互で連携して攻撃を行っている、とのこと。

一方で、国際危機グループが2017年11月に発表したリポートは、タイ南部のイスラム系武装組織はあくまでパッタニー共和国の樹立をめざすものであり、いわゆる「ジハード」ではなく、それゆえにアルカイダやイスラム国といったグローバル・テロ組織に忠誠を誓った組織がひとつもないのだ、と結論づけています。

実際、タイ南部で最大の反政府組織はパッタニ・マレー民族革命戦線(BRN)を名乗っています。

BRNは1984年に3組織に分裂、一部は2013年からタイ政府と和平交渉を初めており、その成果もあって2017年は武装攻撃による死者数がここ13年間で最少となりました。

ヤラーでも、昨日の爆弾攻撃は数ヶ月ぶりのものだったとされています。

ところで私が気になるのは、当該爆弾攻撃についてどこのメディアも「テロ」とは描写していない点です。

私はタイの治安情勢については完全に素人なので、ここからは学術的根拠に乏しい個人的推察ですが、タイ南部で発生するイスラム教徒がらみの治安事件は基本的にすべて(当局によって)「分離・独立運動」の一環と捉えられ、決して「イスラム的イデオロギー」に基づくものではないと判断されるため、当該事件も「爆弾攻撃」であって「爆弾テロ」ではない、と描写されるのかもしれません。

ただ、一般のイスラム教徒である市民らが集う人気の屋台街に爆弾を積んだバイクを置き去りにし、立ち去って爆発させるという昨日の手口は、中東の街中で頻発する爆弾テロと何らかわりはありません。

既出のBRNの一派であるBRN−C(コーディネート派)は、タイ南部に多くのモスクやマドラサ(イスラム法を教える学校)をつなぐネットワークを所有し、そこで過激な、あるいは原理主義的なイスラム教のイデオロギーを広めたり、戦闘員をリクルートしたりしているとされています。

2500人以上の「中東帰り」のイスラム教徒が、タイ南部で活動しているとも言われています。

タイでは2016年8月11日から12日にかけて、各地で8件の爆発事件が立て続けに発生し、4人が死亡、数十人が負傷するという惨事が発生しました。

この時狙われたのは、日本人にも人気の観光地プーケット島と、リゾート島への経由地として知られるスラタニ、欧米人にも人気の観光地ホアヒンなどです。

これらの爆発については、相互に関連しているのかも、また誰が犯人なのかもはっきりしていない(明らかにされていない?)のですが、当局は分離・独立派のイスラム教徒らが背後にいるとみているようです。

モスクやマドラサでイスラム教のイデオロギーを広め、仲間を集い、目的達成のためにはイスラム教徒を殺害することも全く厭わず、人の多く集まる市場などでも攻撃を行い、時には外国人も標的とする。。。

こうしてみると、やっていることは完全にジハードです。

奇しくも2017年11月、タイのプラウィット副首相は「タイに不法滞在している外国人の中には、たぶんイスラム国のテロリストがいる」と発言しています。

今月16日には、パスポートを偽造しイスラム国に接触していたと見られるパキスタン人がバンコク市内で逮捕されています。

もちろん、昨日のヤラーの爆発がイスラム教徒によるテロだという証拠もなければ、南部のイスラム系武装組織がジハード思想を持っているという証拠も、昨年の連続爆弾事件がイスラム教徒の手によるものだという証拠もありません。

しかし様々な事象を表面的に俯瞰すると、なにかいやーな感じがするのは確かです。

2018年1月18日木曜日

墓石破壊で存在を誇示:シリアのイスラム国の今


イスラム国が昨日、シリアのイドリブで墓地を破壊する写真を公開しました。

墓石を倒します。



墓石をたたき壊します。


「あれ?イスラム国ってもう崩壊したんじゃなかったっけ?」と思われる方もいるかもしれません。

確かにイスラム国は2017年10月、シリア最大の拠点ラッカを失いはしました。

しかし彼らはシリアだけではなく、世界中にまだ存在しつづけています。

そもそも欧米メディアとそれに便乗する日本メディアはこぞって、ラッカのことを「ISが首都と位置付ける」とか「ISが首都と称する」などと書き立ててきましたが、イスラム国はラッカを首都と位置付けたこともなければ、首都と称したこともありません。

ですから、「イスラム国の首都ラッカが陥落した。だからイスラム国は崩壊した」というロジックは、(ロジックとは言えないほどお粗末なのが実態ですが。。。)そもそも成立しえないのです。


先日(1月14日)ドイツの国防相が「イスラム国との戦いはまだ終わっていない」と述べたことに見られるよう、世界中の治安・諜報当局者がイスラム国の脅威は未だに失われていないという認識を共有しています。


イドリブは現在、シリア最大の激戦地です。

アルカイダ勢力の最後の砦であるイドリブを奪還すべく攻勢をかけているのはシリア政府軍ですが、一方でその政府軍を攻撃して僅かながらも戦果をあげているのがイスラム国です。


イスラム国支持者の公開したインフォグラフィックによると、1月10日から14日までの4日間に、イスラム国はイドリブとハマーの郊外で30人の兵士を殺害し、17人を捕虜にしたとされています。



彼らが墓地を破壊する写真を公開したということは、一時的であれ、彼らがその墓地の存在する一帯を手に入れたということを意味します。

イスラム国は、墓石など、そこが墓であることを示すものを設置することは神の法に反すると理解しているため、支配地域に墓地があるとほぼ確実にそれを破壊します。

それにより、イスラム法の定める「勧善懲悪」を明示するのが目的です。


現在シリア政府軍にとって、最大の敵はイスラム国ではなくアルカイダです。

・・・アルカイダというか、本人たちは「シリア解放委員会」なる武装組織連合を名乗っているのですが、実態はシリアのアルカイダとそれに仲間入りした地元武装組織、そこに加勢するウイグル人武装組織(トルキスタン・イスラム党)など別のアルカイダ系外国人組織などの集合体です。

現在だけではなく、イスラム国がラッカからデリゾールにいたる広大な地域を支配していた頃も、イスラム国はシリア政府軍にとっての最大の敵ではありませんでした。


しかし一方で、イスラム国は今でも既述のイドリブだけではなく、ハマー郊外の一部、首都ダマスカスにあるヤルムーク・キャンプの一部、ダマスカス南西に広がる一帯の一部などを支配し、小規模ながらも活動を継続させています。



「イスラム国は崩壊した」という判断は、シリアの現状を見ただけでも時期尚早と言えるでしょう。

★ホウドウキョクの飯山陽のページにも転載されています。