2018年3月12日月曜日

シリアで新たなアルカイダ組織結成

先月末、シリアのイドリブで新たな武装組織連合フッラースッディーン(HDと略すことにします)が結成されました。

日本語に訳すと「宗教の保護者たち」といった意味です。

イドリブは現在、HTSとJTSというジハード系武装組織連合間で熾烈な戦いが繰り広げられていますが、HDは反体制派同士の戦いを停止しともに東ゴータで戦火のもとに苦しむ仲間を救済するためにシリア政府軍と戦おうと呼びかけました。


これまでに、ジャイシュルマラーヒム、ジャイシュルバーディヤ、ジュンドゥッシャリーア、ジャイシュッサーヒル等々、イドリブやラタキアの10以上のイスラム系武装組織がHD入りを誓う声明を出しています。




これらはいずれもアルカイダ支持で知られる武装組織であるため、アルカイダからの「公認」はまだなされていないものの、メディアや専門家は「HDはシリアにおける新たなアルカイダ組織だ」との見方で一致しています。

シリアには内戦開始当初からアルカイダ系武装組織が存在しており、2012年以降はヌスラ戦線がもっぱら「シリアにおけるアルカイダ」の役割を担ってきたものの、2017年にはヌスラが自らアルカイダからの脱退を宣言、国際的には未だに「ヌスラ=シリアのアルカイダ」という認識が強いものの、シリア内戦においてはHTSという武装連合を結成し、他の反体制派やシリア政府軍と戦うという、妙な状況になっていました。

アルカイダのイデオロギーの特徴のひとつは、今の指導者であるザワーヒリーが演説でよく言っているように、ジハード組織同士でいがみあうのはやめ、一致団結して敵と戦おうと考える点にあります。

HDが最初に出した声明でもその特徴は確認されます。

共にジハードを掲げシリアでイスラム法による統治を実現させるという目標を共有するHTSとJTSという武装連合が、アサド政権に対して共闘しないばかりか互いを敵として戦っているというイドリブの現状は、アルカイダのイデオロギーとはかけ離れています。

興味深いのは、HD結成後より世界各地からHDを支持するという落書きのような投稿がSNS上などになされている点です。

こちらはインドネシアから。


こちらはインドから。


こちらはソマリアから。


こちらはナイジェリアから。


こちらはバングラデシュから。


これらは、アルカイダのイデオロギーが世界でいまだに求心力を持っていることの表れだと考えることもできます。

2017年10月のラッカ陥落後イスラム国の退潮が顕著になる中、シリア内戦の有力なプレイヤーとして新たに頭角を表すのは、このアルカイダ系武装組織かもしれません。

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