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2019年10月29日火曜日

テロリスト称賛を隠しきれない人たち

2019年10月27日、アメリカのトランプ大統領によってイスラム国指導者バグダーディーの死が発表されました。

トランプ氏はバグダーディーの死で「世界はより安全になった」と主張しましたが、本当にそうなのか、彼はどのような立場にあり、彼の死はイスラム国や世界にどのような影響を与えうるか、トルコはテロ支援国家なのかといった問題については、FNNに寄稿したこちらの記事をご覧ください。

それとは別に、どうしても記しておきたいことがあったため、久々にブログに書くことにしました。

それは、バグダーディーの死により、イスラム過激派テロリストへの称賛を隠しきれないメディアや専門家の「本音」が露呈された、という事実です。

まずはこちら、ワシントン・ポストの記事です。

 バグダーディーのことを「厳格な宗教学者」と描写しています。

テロリストでも過激派でも大量殺人犯でもレイプ犯でもなく、「厳格な宗教学者」です。

日本人2人を含む多くの人を残虐なやり方で斬首したのも、ヨルダン人パイロットに生きたまま火をつけて焼き殺したのも、多くの同性愛者を高い建物から突き落として処刑したのも、ヤズィーディー教徒の女性たちを性奴隷にしたのも、キリスト教徒をズィンミーという地位に貶めたのも、「不信仰者」や「背教者」数万人の命を奪い、家族を奪い、故郷を奪い、破壊し尽くしたのも、全部イスラム国です。

ワシントンポストがその指導者であるバグダーディーを「厳格な宗教学者」と讃えるのには、理由があります。

ワシントンポストは、イスタンブールでサウジの手により殺されたカショギがコラムを書いていた新聞です。カショギは、サウジやエジプトがテロ組織指定しているムスリム同胞団と深いつながりのあった人物です。

ムスリム同胞団は、民主主義をツールとして利用することによってイスラムによる世界征服という目標を達成すべく活動している世界最大のイスラム組織です。

こうした動きは「政治的イスラム」と呼ばれ、ムスリム同胞団の現在の最大の支援者であるトルコのエルドアン大統領がその急先鋒です。

ワシントンポストはカショギ殺害後、カショギの遺志を継いだ報道を続けると宣言しました。

ムスリム同胞団同様、イスラムによる世界征服実現を目指し「立派に殉教」したカリフ・バグダーディーを「厳格な宗教学者」として讃えるのは、カショギの遺志の継承者としてこれ以上ないほどふさわしいふるまいだと言えます。

なおトランプ大統領は、ワシントンポストをかねてより「フェイクニュース」と批判しており、先日アメリカ当局は政府機関に同紙の購読契約の更新をしないよう通告しました。

次はイギリスの、ザ・タイムズ。


バグダーディーは「有望なサッカー青年でありコーランを学ぶ学生だった」そうです。

バグダーディーの死は、ザ・タイムズにとってよほどショックだったことでしょう。

同様の記事はBBCインドにも。


サッカーのスター選手だったことだけではなく、子供や囚人にもコーランを教えていた、とのこと。

うーん、文武両道、実に素晴らしい「厳格な宗教学者(byワシントンポスト)」ですね。

次はブルームバーグ。

 
「無名のコーラン朗唱者からシリアとイラクを支配する主体の統治者へ」と、まあみなさん、よっぽどバグダーディーの「立身出世」にご執心のようです。

次はロイター。



バグダーディーは「転落」したということは、それ以前はよほど素晴らしい地位にあったという認識のようです。

次にパキスタンの政治家。


アメリカ大統領の発表は信じないけど、イスラム国の公式発表は信じるそうです。

最後に日本人研究者。
「社会科学に基づいたきっちりとした研究」をしないと、バグダーディーやビンラディンを否定してはいけないそうです。

また、「歴史的研究」をしないと、イスラム国やアルカイダを否定してはいけないそうです。

テロリストやテロ組織への称賛を隠しきれず、むしろ本当は絶賛したいのだが理性でどうにかそれを抑えている、といった言説は、実はメディアにも研究者にも多く見られます。

バグダーディーの死は、彼らが本音をさらけ出す契機となったという意味で、私にとっては極めて重要です。

一般に、イスラム過激派や政治的イスラムを擁護したり、それらを批判する人に対し「ヘイトだ!」とレッテルを張りその発言を封じ込めようとするメディアや人物は、左派的傾向にあります。

左派とイスラム過激派、政治的イスラムは、今ある世界の秩序やルールを全て破壊しなければならない、という信念を持っている点で一致しています。

だから西洋の左派は「リベラル」を自称しつつ、イスラム世界の「リベラル」ではなく、イスラム過激派や政治的イスラムに接近し、「ハマスやヒズボラは左派の仲間だ」と臆面もなく発言したりするのです。

その様については、中東協力センターニュースに寄稿したこちらの記事に記しました。

イスラム国やアルカイダなどのイスラム過激派やムスリム同胞団などの政治的イスラムが目標としているのは、もちろん、イスラムによる世界征服です。神の法であるイスラム法によって全世界を統治するため、彼らはジハードを続けています。

左派が今ある世界の秩序を破壊した後、何をもたらそうとしているのかは私にはわかりません。一部の人が富と権力を独占し、その他大勢を「平等」の名の下に統治するソ連のような体制でしょうか?

私はメディアや研究者の世界に深く刻み込まれたこうした破壊イデオロギーに対し、甚大な危惧を抱いています。

2019年1月30日水曜日

2019年版「世界の脅威評価」とアジアにおけるイスラム過激派

ODNI(アメリカ国家情報官室)が2019年版の「世界の脅威評価」リポートを公開しました。

サイバー攻撃や大量破壊兵器等と並び「世界の脅威」のひとつとして取り上げられているのがテロリズムです。

テロリズムの第一に挙げられているのがスンナ派武装過激派であり、世界中に多くの組織を持つグローバル・ジハーディストは依然として世界の主たる脅威であり続けているとされています。

グローバル・ジハーディストを束ねる二大組織として挙げられているのが、イスラム国とアルカイダです。

両者の世界的な勢力拡大の実態は以下の地図に示されています。


斜線で示されたトルコ、エジプト、リビア、アルジェリア、マリ、ソマリア、イエメン、アフガニスタン、パキスタン、バングラデシュといった諸国にはイスラム国とアルカイダの両勢力が存在し、多くの場合両者は直接戦闘し牽制しあっています。

興味深いのは、シーア派が大多数を占めるイランがアルカイダの活動地域として明確に図示されている点です。

アルカイダの指導層がイランに潜伏し影響力を強めていることは、既にアメリカ政府や国連も指摘しています。

 イスラム国は領土を大幅に失った現在もイラクとシリアに数千人の戦闘員を擁し、世界中に8支部、10以上のネットワーク、数千人以上の支持者を保持し、依然として中東及びアメリカを含む西側諸国に対する攻撃を続けるだろうと予測されています。

またイスラム国はスンナ派イスラム教徒の抱える不平不満を吸収し社会的な不安定さを利用することによって、将来的にはイラクとシリアに再び広大な領土を獲得することを目指すだろうとも予測されています。

アルカイダについては、世界に広がるネットワークの指揮系統構造を強化しアメリカを含む西側諸国への攻撃の呼びかけを続けているものの、ここ数年その攻撃は国外の権益に対するものに限定されており、今後もその傾向は続くのではないかと予測されています。

またアルカイダの支部の中ではイエメンを拠点とするアラビア半島のアルカイダ(AQAP)、北アフリカとサヘル地域を拠点とするイスラムマグレブのアルカイダ(AQIM)が特に強大化しており、いずれも反政府武装闘争を展開しつつ「安全地帯」と資源を保持し、地域におけるアメリカの権益への攻撃の機会をうかがっているとされています。

2018年にジハード主義者が特に勢力を拡大させた地域としては、アフリカとアジアが挙げられています。

マラウィを占拠して半年以上フィリピン軍と攻防戦を繰り広げ今も各地でテロを実行しているフィリピンのイスラム国、幼い子供を含む家族全員による自爆テロを連続的に実行したインドネシアのイスラム国など、アジアでのイスラム過激派の「活躍」は世界的に見ても顕著なものとなっています。

この後に及んでなんですが、「アジアのイスラム教徒は穏健だ」という思い込みはイスラム過激派には一切当てはまりません。

イスラム国家樹立を目指し武装して国軍と直接戦闘を繰り広げたり、あるいはテロ攻撃を実行したりするという点において、アジアのイスラム過激派は中東やアフリカのイスラム過激派と違うところは全くありません。

また国境を越えてグローバルに「活躍」するという点においても、皆等しく共通しています。

マレーシアのテロ対策部門長によると2013年から2018年までに同国でテロ容疑で逮捕されたのは445人であり、そのうち4分の1以上を占める128人が外国人だったとのことです。

テロ容疑で逮捕された外国人のうち最も多いのがフィリピン人で46人、次がインドネシア人で35人となっています。

タイやシンガポールといった東南アジア諸国の当局もイスラム過激派とテロに対する警戒を強化しています。

イスラム過激派やテロといった脅威はもはや、中東やアフリカといった日本から「遠い」世界だけのものではなくなっているということを、多くの事件や統計、情勢分析が指し示しています。

2019年1月25日金曜日

カナダ人医師のソマリアでのジハード

イスラム国ソマリ州がソマリアでジハードをし殉教した戦士たちを紹介する動画を公開しました。

その中の一人にドクター・マジャルテイニーと称されるカナダ人医師がいます。


イスラム国はジハードの一環として医療を重視しており、かつてイスラム国入りしたオーストラリア人医師がいることなども知られています。

同動画のナレーションはドクター・マジャルテイニーについて、カナダからヒジュラ(移住、聖遷)してきてソマリアで殉教したと説明しています。

生前のドクターの映像が残されています。


首から聴診器をかけイスラム国の旗と銃をバックにしたドクターは完璧な英語で、不正なるソマリア政府に見捨てられた貧しい人々に無料で医療行為を施してきたと語ります。


治療した人々のほとんどが、病気に侵されているだけでなくひどい栄養失調状態にあったそうです。

神のおかげで、外科手術や歯科治療を必要とする人、赤ちゃんや妊婦などなど様々な人々を助けることができたと語った後で、ドクターは次のように続けます。

「イスラム国の外にいる兄弟姉妹たちよ、特に医師たちよ、我々はあなた方の助けを必要としている。神があなた方に対し『おまえたちは宗教とイスラム共同体に何を提供したか』と尋ねる日に、あなた方は何と回答するつもりだろうか?あなた方は不信仰者たちと背教者たちが昼夜を問わずイスラム教徒たちを爆撃しているのを見聞きしているはずではないか。あなた方に忠告しよう。ジハードに赴くのだ。そして天国の最も高き場所を予約するのだ。急いで乗り物に乗りたまえ。」

ソマリアのイスラム過激派組織といえばシャバーブがよく知られており、先日も隣国ケニアの首都ナイロビで高級ホテルの入った複合施設を襲撃するという大規模テロを実行しました。

しかし当該ビデオで紹介されているように、ソマリアにはイスラム国もいます。

ソマリアでイスラム国が旗揚げをしたのは2015年10月のことであり、シャバーブとの間で小競り合いが続いてきましたが、昨年末ついにシャバーブがイスラム国に対して正式に宣戦布告する動画を公開しました。

この中でシャバーブはイスラム国のことを「ジハード戦士たちを分裂させ弱体化させる病気」と非難し、これを根絶やしにしなければならないと主張しています。

ソマリアのイスラム過激派組織とはいっても、シャバーブがしばしばケニアを襲撃するようにその活動は決してローカルなものではありません。

またソマリアのイスラム過激派組織に参加する戦闘員も、当該動画で紹介されたカナダ人医師のように「グローバル化」しています。

アメリカ司法当局は先週、イスラム国に資金提供をしていた容疑などでミシガン州に住む3人のケニア出身イスラム教徒を逮捕したと発表しました。

うち1人は、ソマリアのイスラム国に参加するため出国しようとしたところを空港で逮捕されたとのことです。

イスラム国入りしようとする外国人戦闘員は、かつてはこぞってシリアそしてイラク入りを目指しました。

ところがシリアへのルートとなってきたトルコが国境警備を厳しくし、さらにイスラム国がシリアのラッカとイラクのモスルという二大拠点を失ったのに伴い、彼らはジハードの地を他に求めるようになりました。

そもそもジハード希望者がシリアやイラクを目指す必然性というのは特にはありません。

彼らはイスラム法によって統治された地に赴き(ヒジュラ)、そこで仲間とともにイスラム教の敵と戦うジハードに身を投じることを目的としているので、シリアやイラク入りすること自体が難しくなった今、行き先を変更するのは必然的ですし、イスラム国当局もそれを勧めています。

今、特に多くの外国人戦闘員が集結しつつある国のひとつとして挙げられるのが、フィリピンやリビアと並んでソマリアであり、米軍も対テロ戦争の一環としてソマリアでの空爆作戦を強化しています。

ソマリアは今や、世界のジハードの最前線のひとつなのです。

2018年5月17日木曜日

インドネシアで相次ぐテロ事件と「インドネシアのイスラム国」

インドネシアでは2018年のラマダン開始前に子供を含む一家6人全員が自爆するといった凄惨なテロ事件が相次ぎました。

①5月8日 ジャカルタ南部デポック刑務所で受刑者10人以上が警官6人を殺害
②5月13日 インドネシア第二の都市スラバヤで教会3カ所を狙い一家6人が3連続自爆、18人死亡、40人以上負傷
③5月13日 スラバヤ近くのシドアルジョのアパート内で一家のうち3人が自爆
④5月14日 スラバヤの警察署を狙い一家5人が2連続自爆、自爆者4人死亡、警官と民間人あわせて10人負傷
⑤5月16日 スマトラ島リアウ警察署が5人の男に襲撃され警官1人死亡、警官2人とジャーナリスト2人が負傷

一連の事件は犯行の残虐性、家族ぐるみの犯行であること、2日間に子供を含む13人もの人が自爆を実行するというあまりにも高い頻度などがあいまって、世界最大のイスラム教徒人口を擁するインドネシアはもちろんのこと、東南アジア近隣諸国や世界にも衝撃を与えています。

(従来「寛容なイスラム教国」とみなされていたインドネシアに過激なイスラム教思想が広まった背景については拙著『イスラム教の論理』に記してあります。)

上記のうち①②④⑤についてはイスラム国が犯行声明を出しており、インドネシア治安当局も③を含む全ての事件についてイスラム国に忠誠を誓っているテロ組織Jamaah Ansharud Daulah (JAD)の関与を認めています。

JADはインドネシアでイスラム国に忠誠を誓っているテロ組織の中では最大のもので、2015年にアマン・アブドゥッラフマーンAman Abdurrahmanという人物により設立され、2017年にはアメリカ政府によりテロ組織指定されました。(写真はkompas.comより拝借したアマンのもの)


アマンはLIPIAというサウジのイスラム大学のジャカルタ分校でイスラム教とアラビア語を学んだ人物で、2004年にデポックでテロを計画していたとして逮捕されるも、刑務所内における行いがよかった(!)ために2008年に釈放、2010年にはJamaah Anshorul Tauhid (JAT) の指導者であるアブバカル・バーシルAbu Bakar Baasyirとともにアチェにテロリスト養成キャンプを設立、それにより9年の実刑判決を受け、現在も服役中です。

2014年にイスラム国がカリフ制再興を宣言するとアマンは刑務所内でカリフに忠誠を誓い2015年にJADを結成、以来「インドネシアのイスラム国」の実質的指導者とみなされています。

服役中にもかかわらずアマンは2016年ジャカルタ中心部で犯人4人を含む8人が死亡、26人が負傷したテロや、2017年東ジャカルタで警官3人が死亡したテロなど、国内の様々なテロ事件に関わっているとされています。

特に2016年のジャカルタでのテロ直前にアマンが刑務所内から発行した以下のようなファトワー(イスラム法的見解)はインドネシアのイスラム過激派に広く影響を与えているとされています。

「イスラム国に移住しなさい。移住できないならば、どこでもいいのであなたの命をかけてジハードをしなさい。戦うことができない、もしくはその勇気がないならば、それを実行する者に対しあなたの財産を与えることで貢献しなさい。もし財産で貢献できないならば、他者に対しジハードを敢行するよう促しなさい。もしそれすらできないと言うなら、あなたの忠誠にいったい何の意味があるというのだ?」

これはイスラム国中枢部によるジハードおよびヒジュラの呼びかけと基本は共通していますが、より一層プラクティカルだと言えます。

自分でジハードできないならせめて他人にジハードをけしかけろ、といった表現は、イスラム国中枢部ではあまり用いられません。

さて今回の連続テロ事件は直接的にはJADの第二の指導者であるザエナル・アンシャリZaenal Anshariの逮捕によって引き起こされた、と警察は見ています。

それはそうなのかもしれませんが、子供の自爆、女性の自爆、そして一家揃っての自爆というのはインドネシアでは前例がないこと、また一連の事件がラマダン前に実行され、それをイスラム国中枢部も把握していたことなどから、どうしても、インドネシアのテロは新たな局面に入ったと認識せざるをえないように思います。

2018年5月13日日曜日

インドネシアで一家6人が3連続自爆テロ実行:前例なき悲劇の背景にある論理とは

インドネシア第二の都市スラバヤにある3カ所の教会を狙った3連続自爆テロ事件が発生しました。


インドネシアでは4日前に刑務所内でイスラム国戦闘員が武器を奪って複数の警備員を殺すというテロが発生したばかりです。

この時もイスラム国は犯行声明やビデオを出しましたが、今回の連続自爆についてもイスラム国が犯行声明を出しています。



これによると、まずはペンテコスタ教会に対して自動車爆弾による自爆テロを実行、次に聖マリア教会に対して自爆ベルトによる自爆テロを実行、最後にディポネゴロ教会に対してバイク爆弾による自爆テロを実行し、11人を殺害、41人を負傷せしめたとのこと。

各々の場所はについては、STRAITS TIMESのこちらの地図をごらんください。


「インドネシアもテロが頻発するようになってきたな…」とここまででも既に十分に衝撃的ですが、本当に衝撃的なのはテロ実行犯の実像です。

警察発表によると、これらのテロを実行した6人は全員、シリア帰りのひとつの家族の成員であり、15歳と17歳の男兄弟が聖マリア教会を狙ってバイク爆弾で自爆、自爆ベルトを装着した母親が9歳と12歳の娘とともにディポネゴロ教会前で自爆、父親がペンテコスタ教会を狙って自動車爆弾で自爆した、とのこと。

さすがの私も、あまりの壮絶さに言葉を失いました。

ある筋によると、この一家はイスラム国に忠誠を誓っているJAD (Jemaah Ansharut Daulah) の設立者であるアマン・アブドゥッラフマーンのスリーパーセルだったとのこと。

警察は同じくスラバヤにあるカテドラル教会に対するテロを実行しようとしていた人物を拘束、またペンテコスタ教会では爆発前の爆弾を発見したとも発表しています。

さらにジャカルタ警察の報道官は、西ジャワのチアンジュールで同じくJADに属するテロリストと警察が銃撃戦となりテロリスト4人を殺害、2人を拘束したと発表しました。

連続自爆犯一家とチアンジュールのグループとのつながりについてはまだはっきりとしていません。

さらに夜になって、今度は東ジャワ州にあるシドアルジョの警察署近くで爆弾テロがあり、少なくとも1人が死亡しました。

このテロと自爆一家とのつながりも現状では不明です。

イスラム国がカリフ制再興を宣言したのは2014年6月で、それ以降この4年間に世界中で恐るべき数のテロを実行し数え切れない犠牲者を出してきましたが、私の知る限り、一家6人全員が一度に連続自爆テロを実行して果てるなどという前例はありません。

2015年12月にアメリカのカリフォルニアで発生したテロは、イスラム国を支援する夫婦二人が実行したものでしたが、これも非常に珍しい事例です。

兄弟がともに特攻攻撃で果てたり、立て続けに自爆したり、父と息子が連続して自爆するといった例もありました。

しかし父、母、娘2人、息子2人が連続して自爆、あるいはそれに類する事例はないように思います。

私はここで、9歳の娘を巻き添えにしてまで…という情緒的な話をしたいわけではありません。

拙著『イスラム教の論理』に記したように、イスラム国のような過激派は現在、武力で敵を倒すジハードはイスラム教徒全員の義務であると捉えており、そこに女性や未成年者といった例外はありません。

また彼らはジハードを最高の善行と信じ、それを敢行することにより天国に直行できるとも信じています。

「無辜の人々を殺しておいてそんなわけないだろう」とか、「天国なんてあるもんか」という私たちの論理と彼らの論理とは、根本的に全く異なっているのです。

ですから当然、未成年の娘や息子を道連れにして自爆するなんてかわいそう、という感傷など、彼らには完全に無縁です。

この2〜3日中には今年のラマダンが開始されます。

彼らにとってラマダンは「斎戒の月」であると同時に、もしくはそれ以上に「ジハードの月」です。

昨日はパリでもナイフによるテロ事件が発生し、こちらもイスラム国が犯行声明を出しました。

警戒すべき期間はむしろこれから始まります。

2018年5月9日水曜日

インドネシア刑務所内でイスラム国テロ:ラマダン前に世界各地で攻勢をかけるイスラム国

インドネシア警察はジャカルタ南部にあるデポック刑務所で囚人による暴動が発生し、囚人とテロ対策部隊の双方に死傷者が出たと発表しました。

警察によるとこの暴動でテロ対策部隊員5人と囚人1人が死亡、現在テロ対策部隊員1人が人質となっており交渉を続けているとのこと。

この暴動については、イスラム国がいち早く声明を出しました。

まずはデポック刑務所内でイスラム国戦闘員とテロ対策部隊の間で戦闘が発生していると伝え...


次にテロ対策部隊のメンバーを捕虜にしたと伝え...


続けてこの戦闘でテロ対策部隊メンバー10人を殺害したと伝え...


殺害したテロ対策部隊メンバーの映像も公開しました。

(映像は非常に残酷なものなのでここには掲載しません。)

戦闘員らは刑務所内でイスラム国の旗を掲げ...


テロ対策部隊から奪った武器を披露し...



ポーズをきめて集合写真も撮っています。


これはかなり衝撃的な出来事であり、インドネシア警察がイスラム国の関与を否定している事実がそのヤバさを象徴しているとも言えます。

これ以外にもイスラム国は、昨日一日に限っても世界各地でさまざまな「戦果」をあげたと発表しています。

イラクのサラーフッディーンではシーア派民兵を乗せた車両を爆弾で吹っ飛ばし...


 同じくイラクのキルクークでは石油会社職員3人を爆殺し...


シーア派民兵3人を死傷させ...


バグダードでもシーア派民兵8人を死傷させ...


エジプトではラファハでエジプト軍兵士を狙撃して殺し...


ソマリアのモガディシューでは諜報部員を暗殺し...


イエメンのキーファではフーシー族と戦い...


シリアのヤルムーク・キャンプでは戦闘でシリア軍兵士48人を殺害し...


ダマスカスではシリア軍兵士を処刑し...


リビアでは自爆テロでリビア軍兵士13人を死傷させました。


このように主だった攻撃だけでも7カ国の複数箇所で発生しています。

シリアのラッカとイラクのモスルが陥落したことによってイスラム国は完全崩壊し戦闘員は絶滅したと思っている人も多いかもしれませんが、イスラム国はシリアとイラクでも完全崩壊してはいませんし戦闘員も元気に活動しているだけではなく、いまだに世界各地に拠点をもち各々で戦闘員が日々戦闘に明け暮れています。

インドネシアやフィリピンという日本人にとって身近で日本に物理的にも近い国も、そうした「イスラム国活動地域」のひとつです。

イスラム教徒の用いるヒジュラ歴では来週からラマダン月に入ります。

ラマダンはイスラム教徒にとって斎戒の月であるだけでなくジハードの月でもあり、毎年イスラム国を始めとする「過激派」が支持者らにジハードの敢行を熱心によびかける月でもあって、実際深刻な被害をもたらすテロが頻発する傾向にあります。

昨日世界各地で発生した攻撃からは、今年のラマダンも例年通り攻勢をかけるというイスラム国からの不吉なメッセージが読み取れます。

2018年3月13日火曜日

教育から宗教の影響を排除せよ:スウェーデンの決定とイスラム教

 スウェーデン教育相は先日、今後は男女平等や人権という「根本的価値」を支持しない者には学校運営を認めないという方針を新聞紙上で発表しました。

現政府は学校から宗教の影響を排除するという基本方針を掲げており、今回の決定はその方針に従ったものだとみられています。

スウェーデンにおける学校は男女平等を積極的に促進し、生徒たちがジェンダー・アイデンティティーとは独立した形で能力や関心を開発させることを認めなければならない、と同相は記しています。

さらに、スウェーデンの子どもたちは、たとえ宗教組織によって設立された学校においてであろうと、直接的あるいは間接的に宗教活動を強制されることは絶対にあってはならないとし、全ての教育は宗教の影響から完全に自由でなければならないという基本方針を強調してもいます。

スウェーデンには現在60以上の宗教学校があり、そのほとんどはキリスト教系で、イスラム教系の学校は11あるとのこと。

この決定は、ソマリア系イスラム教徒で2010年から2014年までスウェーデン議会の議員も務めていたワベリAbdirizak Waberi氏が、ボロースで新たなイスラム教系学校設立を目指していることと関係していると言われています。


ワベリ氏は政治活動を開始する以前は、スウェーデンのヨーテボリにあるイスラム教系小学校の校長でした。

同校ではイスラム教の教義についての授業を週に2コマ課しており、これは他の学校よりも多いだけではなく、男は4人妻を持つことが許されているがその逆は許されていないといったイスラム教的価値について教えているとか、男子生徒は100%が満点で卒業しているのに女子生徒は71%しか満点をもらっていないという同校の実態はスウェーデンの他の学校と比べて明らかにおかしいなど、しばしば批判の対象とされてきました。

ワベリ氏自身も、イスラム教徒の男が4人妻を持てることや、イスラム教徒の男は異教徒と結婚できるが女はできないことなどは、コーランに記されているのだ、とインタビューで答えています。

ワベリ氏はスウェーデン・イスラム協会や、スウェーデン・イスラム教学校組合、スウェーデン・イスラム教徒政治フォーラムといったスウェーデンの名だたるイスラム教組織の有力メンバーであるだけでなく、過去にはヨーロッパ・イスラム組織連盟の副会長を務めたこともある、非常に影響力のある人物です。

過去の記事で示したように、ヨーロッパにおいてこれまではほぼ放任されてきた宗教系の私立学校を国が管理すべきだという議論は、既にイギリスでも起こっています。

というのも、イギリスではイスラム教学校において教師が生徒をジハード戦士に育てるべく数年間にわたって教育していた罪で実刑判決を受ける、という深刻な事案が既に発生しているからです。

「イスラム教の論理」と「西洋の論理」が異なることは、イスラム教徒住民が多く暮らすヨーロッパ諸国では、様々な場所で目に見える形で健在化し、社会問題化あるいは政治問題化しているのです。

イスラム教と教育の問題については、日本も他人事ではありません。

日本でも、イスラム教組織やモスクなどがイスラム教徒の子女にイスラム教の教義や価値について教える学校や教室を多く運営しています。

また、日本の学校で教えられることはイスラム教の価値に反するとして、自分の子どもが学齢期になるとインドネシアやパキスタンなどに住まわせ学校に通わせる在日イスラム教徒も少なくありません。

イスラム教と教育という問題は、単に給食をどうするか、という問題ではないのです。

2018年3月7日水曜日

子どもにテロリスト養成教育を施していた男に有罪判決:ロンドン@イギリスの事例

イギリスの裁判所は先週、イスラム教徒の子ども達に対しテロ攻撃を実行する「イスラム国戦闘員」に仕立てるための「教育」を施していたとして、オマル・ハッキー容疑者(25歳)に有罪判決を下しました。


イスラム国を支持するハッキーは教師という立場を利用して11歳〜14歳の子ども達にイスラム国の斬首映像を見せたり、ロンドンで発生したテロ攻撃を模して「ロールプレイング」での訓練を施していたりしていた、とのこと。

警察によると、ハッキーは公立学校の教師ではなく、ゆえにイギリスの教員免許も取得していない状態で、いくつかのイスラム教徒用私立学校とバーキングにあるリップル・ロード・モスクに付属する学校で教師をしており、4年間で250人ほどの生徒を受け持ち、うち110人にこのジハード戦士養成教育を施していたそうです。

現在、そのうち35人ほどが脱過激思想教育を受けているとのこと。 

生徒たちには、自分がイスラム国と関係していると告げ、そのことを他言したら斬首すると脅してた、とも報じられています。

長期にわたって子どもたちを「イスラム国のジハード戦士」として養成し、最終的にはロンドンで大規模テロを実行するのが彼の計画だったようです。

ニュース解説者によると、イギリスの学校では教育の透明性を高め、かつ子どもたちを守るという趣旨で、通常教員と補助教員という2名体制でクラスを担当しているとのこと。

ハッキーは子どもたちに「イスラム教」についての学問(イスラム学)を教えていたとされますが、要するに一人で、誰にも管理・監視されない状態で、子どもたちに対し、自分が教えたいことを自由に教える空間をモスクによって与えられていたのが問題なのだ、と解説者は語っています。

モスクが子どもたちにイスラム教を教える学校を併設したり、講座を開講したりするのは、世界各国で共通しています。

そこで教師役を務めるのは伝統的に、イスラム教について一般信者よりも多く学び、多く知っているとされる人物であって、特別な資格が必要とされることはありません。

イギリスではモスクでのイスラム教育についても、公立学校と同じようにOfsted(イギリスの教育監査局) の管理下に置くべきだという議論があるそうです。

しかしイギリスの場合は「イスラム教の家庭教師」という存在も多くおり、たとえモスクでのイスラム教育を公的管理下におくとしても、家庭教師までは管理できないという問題も指摘されています。

先日フランスのマクロン大統領も、国内のイスラム教を新たな形で管理するという「宗教改革宣言」を行い、直ちに国内のイスラム教徒指導者が反発する、という事案も発生しました。

今回のような事件が実際に発生している中、イギリスやフランスがモスクやそこでの教育、ひいてはイスラム教徒とどのように関わっていくかは大きな課題です。

2018年1月23日火曜日

タイの市場で爆弾攻撃:タイのイスラム武装勢力とジハード


昨日、タイ南部のヤラー県でバイクに仕掛けられた爆弾が爆発し、3人が死亡、22人が負傷しました。

犯行声明等は出されていないものの、警察筋によると容疑者はイスラム教徒の少年のようです。

バイクが置かれた場所が豚肉屋の目の前であり、亡くなったのも豚肉屋の女主人と客の男性だったことから、仏教徒を標的にした可能性もあります。

タイは仏教国として知られていますが、ヤラー県、パッタニー県、ナラティワート県、ソンクラー県といった南部には、マレー語を話すイスラム教徒が多く居住しています。

同地域は13世紀からパッタニー王朝というイスラム系の王朝によって支配されていましたが、18世紀末にタイのチャクリー王朝によって征服され、20世紀初頭にはタイ政府の直轄地として併合されました。

同地域では現在に至るまで、タイ政府に不満を抱くマレー系イスラム教徒による暴動や武力闘争が散発しており、2004年から現在までだけでも7000人近い死者を出しています。

昨日の爆弾攻撃もおそらく、その一環として位置づけることができます。

日本の外務省も、既出の4県については渡航を自粛、あるいは止めるよう呼びかけています。


ある研究者によると、タイ南部のマレー系イスラム教徒による武力闘争は、1960年代から90年代初頭にかけての時期と2001年以降の時期では性質が異なるとされます。

彼によると、以前は様々なイスラム系武装グループが各々の目的やイデオロギーを掲げて反政府闘争を行っていたため、相互の連携はほとんどなかったものの、2001年以降はおおむねイスラム教というイデオロギーを掲げるという点で一致しており、ゆえに相互で連携して攻撃を行っている、とのこと。

一方で、国際危機グループが2017年11月に発表したリポートは、タイ南部のイスラム系武装組織はあくまでパッタニー共和国の樹立をめざすものであり、いわゆる「ジハード」ではなく、それゆえにアルカイダやイスラム国といったグローバル・テロ組織に忠誠を誓った組織がひとつもないのだ、と結論づけています。

実際、タイ南部で最大の反政府組織はパッタニ・マレー民族革命戦線(BRN)を名乗っています。

BRNは1984年に3組織に分裂、一部は2013年からタイ政府と和平交渉を初めており、その成果もあって2017年は武装攻撃による死者数がここ13年間で最少となりました。

ヤラーでも、昨日の爆弾攻撃は数ヶ月ぶりのものだったとされています。

ところで私が気になるのは、当該爆弾攻撃についてどこのメディアも「テロ」とは描写していない点です。

私はタイの治安情勢については完全に素人なので、ここからは学術的根拠に乏しい個人的推察ですが、タイ南部で発生するイスラム教徒がらみの治安事件は基本的にすべて(当局によって)「分離・独立運動」の一環と捉えられ、決して「イスラム的イデオロギー」に基づくものではないと判断されるため、当該事件も「爆弾攻撃」であって「爆弾テロ」ではない、と描写されるのかもしれません。

ただ、一般のイスラム教徒である市民らが集う人気の屋台街に爆弾を積んだバイクを置き去りにし、立ち去って爆発させるという昨日の手口は、中東の街中で頻発する爆弾テロと何らかわりはありません。

既出のBRNの一派であるBRN−C(コーディネート派)は、タイ南部に多くのモスクやマドラサ(イスラム法を教える学校)をつなぐネットワークを所有し、そこで過激な、あるいは原理主義的なイスラム教のイデオロギーを広めたり、戦闘員をリクルートしたりしているとされています。

2500人以上の「中東帰り」のイスラム教徒が、タイ南部で活動しているとも言われています。

タイでは2016年8月11日から12日にかけて、各地で8件の爆発事件が立て続けに発生し、4人が死亡、数十人が負傷するという惨事が発生しました。

この時狙われたのは、日本人にも人気の観光地プーケット島と、リゾート島への経由地として知られるスラタニ、欧米人にも人気の観光地ホアヒンなどです。

これらの爆発については、相互に関連しているのかも、また誰が犯人なのかもはっきりしていない(明らかにされていない?)のですが、当局は分離・独立派のイスラム教徒らが背後にいるとみているようです。

モスクやマドラサでイスラム教のイデオロギーを広め、仲間を集い、目的達成のためにはイスラム教徒を殺害することも全く厭わず、人の多く集まる市場などでも攻撃を行い、時には外国人も標的とする。。。

こうしてみると、やっていることは完全にジハードです。

奇しくも2017年11月、タイのプラウィット副首相は「タイに不法滞在している外国人の中には、たぶんイスラム国のテロリストがいる」と発言しています。

今月16日には、パスポートを偽造しイスラム国に接触していたと見られるパキスタン人がバンコク市内で逮捕されています。

もちろん、昨日のヤラーの爆発がイスラム教徒によるテロだという証拠もなければ、南部のイスラム系武装組織がジハード思想を持っているという証拠も、昨年の連続爆弾事件がイスラム教徒の手によるものだという証拠もありません。

しかし様々な事象を表面的に俯瞰すると、なにかいやーな感じがするのは確かです。