2018年3月5日月曜日

DVのアザはメイクで隠せ?!:イスラム世界の女性に対する暴力再考

3月8日は国際女性デーです。

イスラム世界において女性が抱える問題は多岐に及びますが、今日は女性に対する暴力について、1年前にモロッコの国営放送でオンエアされ大論争を巻き起こしたテレビ番組をご紹介したいと思います。


これは、司会者の女性がDVで夫などに殴られ顔にアザができてしまった女性に対し、アザを隠すためのメイク方法を伝授する、という趣旨の番組です。

もちろん、番組に出ていた女性は本当のDV被害者ではなく、アザも特殊メイクで作ったものです。

司会者は、「今日は女性に対する暴力撤廃の国際デーにあわせて、 痛ましいテーマですが、殴られてアザができてしまった場合のメイク方法についてとりあげたいと思います」と言って番組を始めます。

「残念なことに殴られたことでアザだらけになってしまった女性」に対し、司会者は 「グリーンのコンシーラーを赤い打撲痕に少しずつ重ねます」「殴られたこの部分は、所は非常にデリケートになっているので、強く押してはいけません」「ルースパウダーを上に乗せてください、そうすれば一日中アザを隠しておくことができます」と述べるなど、かなり実践的。

おまけに、「日常生活の中でパートナーからDVを受けることは普通のことです。彼からDVをうけても、何事もなかったように振舞いましょう」「これは私たちが公言してはいけない問題です。でも残念なことに、これが事実です。私たちはこの番組が、女性たちにとって普通の生活を営む上で役に立つことを願っています」などとも言っています。

この番組は放送後、「女性へのDVが普通であることを前提としている」「メイク方法ではなく男性にDVをやめる方法を教えるべき」「女性に対し、暴力に抗議するより隠せと勧めているのか」等々と非難を浴び、それをうけて国営放送はインターネットから動画を削除し、謝罪をするに至りました。


しかしモロッコで、女性に対する暴力が日常的なものであるというのは、モロッコ人にとってはごく一般的な認識であり、 モロッコに住んでいた私にとってもそれは同じです。

2009年に発表されたモロッコ政府による調査でも、18歳から65歳までの女性の3分の2近く(62.8%)が身体的、精神的、性的、経済的暴力を経験しているとされています。

拙著『イスラム法の論理』でも記したように、イスラム法の中には女性に対する暴力を肯定する要素があります。

今はただ、女性を殴るのは普通だと男性の多くが考えるような社会が、少しずつでも変化してほしいと願うばかりです。

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