2018年1月18日木曜日

墓石破壊で存在を誇示:シリアのイスラム国の今


イスラム国が昨日、シリアのイドリブで墓地を破壊する写真を公開しました。

墓石を倒します。



墓石をたたき壊します。


「あれ?イスラム国ってもう崩壊したんじゃなかったっけ?」と思われる方もいるかもしれません。

確かにイスラム国は2017年10月、シリア最大の拠点ラッカを失いはしました。

しかし彼らはシリアだけではなく、世界中にまだ存在しつづけています。

そもそも欧米メディアとそれに便乗する日本メディアはこぞって、ラッカのことを「ISが首都と位置付ける」とか「ISが首都と称する」などと書き立ててきましたが、イスラム国はラッカを首都と位置付けたこともなければ、首都と称したこともありません。

ですから、「イスラム国の首都ラッカが陥落した。だからイスラム国は崩壊した」というロジックは、(ロジックとは言えないほどお粗末なのが実態ですが。。。)そもそも成立しえないのです。


先日(1月14日)ドイツの国防相が「イスラム国との戦いはまだ終わっていない」と述べたことに見られるよう、世界中の治安・諜報当局者がイスラム国の脅威は未だに失われていないという認識を共有しています。


イドリブは現在、シリア最大の激戦地です。

アルカイダ勢力の最後の砦であるイドリブを奪還すべく攻勢をかけているのはシリア政府軍ですが、一方でその政府軍を攻撃して僅かながらも戦果をあげているのがイスラム国です。


イスラム国支持者の公開したインフォグラフィックによると、1月10日から14日までの4日間に、イスラム国はイドリブとハマーの郊外で30人の兵士を殺害し、17人を捕虜にしたとされています。



彼らが墓地を破壊する写真を公開したということは、一時的であれ、彼らがその墓地の存在する一帯を手に入れたということを意味します。

イスラム国は、墓石など、そこが墓であることを示すものを設置することは神の法に反すると理解しているため、支配地域に墓地があるとほぼ確実にそれを破壊します。

それにより、イスラム法の定める「勧善懲悪」を明示するのが目的です。


現在シリア政府軍にとって、最大の敵はイスラム国ではなくアルカイダです。

・・・アルカイダというか、本人たちは「シリア解放委員会」なる武装組織連合を名乗っているのですが、実態はシリアのアルカイダとそれに仲間入りした地元武装組織、そこに加勢するウイグル人武装組織(トルキスタン・イスラム党)など別のアルカイダ系外国人組織などの集合体です。

現在だけではなく、イスラム国がラッカからデリゾールにいたる広大な地域を支配していた頃も、イスラム国はシリア政府軍にとっての最大の敵ではありませんでした。


しかし一方で、イスラム国は今でも既述のイドリブだけではなく、ハマー郊外の一部、首都ダマスカスにあるヤルムーク・キャンプの一部、ダマスカス南西に広がる一帯の一部などを支配し、小規模ながらも活動を継続させています。



「イスラム国は崩壊した」という判断は、シリアの現状を見ただけでも時期尚早と言えるでしょう。

ホウドウキョクの飯山陽のページにも転載されています。 

0 件のコメント:

コメントを投稿